オーストラリアは「eSIM選びを間違えると本当に困る」国
旅行の通信に関するアドバイスの多くは、どの国も同じ扱いです。最安のギガを探して買えば終わり、と。しかしオーストラリアは例外です。国土はヨーロッパ大陸ほどの広さがあるのに、人口は東京圏より少なく、携帯インフラのほとんどは東海岸と南海岸沿いの細い帯に集中しています。合わない通信網のプランを選ぶと、町と町のあいだで3日間、電波表示は出ているのに実質使えない状態になりかねません。
料金の問題は始める前にほぼ片づきます。オーストラリアeSIMページのプランは1.06ドルから。現地で1日ローミングした場合の料金と比べれば誤差のような金額です。本当に考えるべきなのは、どの通信網につながるか、手持ちの端末が今も使えるか、そして実際の旅程でどれだけ通信量を使うか、の3点です。
3Gという「保険」はもう存在しない
2024年より前に最後に訪れた人にとって、これが最大の変化です。以前は地方で4Gが切れても、端末は静かに3Gへ落ちて低速ながら使い続けられました。そのクッションはもうありません。TelstraとOptusは2024年に3G網を停止し、Vodafoneはそれ以前に終了しています。ここから2つのことが言えます。
- 端末にVoLTEと十分な4Gバンド対応が必要です。 通話を3Gに頼っていた端末や、対応LTEバンドが少ない端末は、アンテナが立っていても接続できないことがあります。2019年前後以降にグローバル販売された機種なら通常は問題ありません。危ないのは古い端末と、特定市場向けの並行輸入品です。
- カバーエリアはほぼ「あるかないか」になりました。 以前は高速から低速へ緩やかに落ちましたが、今は「使える」から「圏外」へ一気に変わります。ヨーロッパなどと比べ、eSIMがどの通信網を使うかの重みが格段に増しています。
3つの通信網、3つのまったく違う地図
オーストラリアの携帯通信網はちょうど3つで、この国向けのeSIMはすべてそのいずれかを利用しています。
- Telstraは地理的なカバー範囲が圧倒的に広く、人里離れたハイウェイ、内陸の小さな町、その間の海岸線の多くまで届きます。
- Optusは都市部、主要な海岸沿いのルート、人気の観光ルートの大半で安定していますが、内陸に入ると急に薄くなります。
- Vodafone(TPG)は都市圏と交通量の多い幹線で高速かつ稠密ですが、地方では明らかに手薄です。
3社とも人口カバー率は95%超と表示します。ただしオーストラリアでは、この数字はどの事業者にも有利に働きます。国民の約9割が数えるほどの沿岸都市に住んでいるためです。都市を覆えば人口は覆えますが、ナラボー平原、グレートオーシャンロードの内陸区間、レッドセンター、スチュアートハイウェイの長い空白区間は覆えません。シドニー、メルボルン、ブリスベンだけならどれでも十分です。レンタカーで白地の多い地図を走るなら、地方での到達範囲が最も広いプランを選んでください。
オーストラリア旅行で実際に使うデータ量
旅行者はデータを買いすぎる一方で、何が容量を食うかを見誤りがちです。現実的な1週間の内訳はこうなります。
- 地図・ナビ:運転1時間あたり約5〜10MB。単体では些細ですが、オーストラリアの運転時間は長くなります。
- メッセージ・メール・一般的な閲覧:多くの人で1日およそ200〜400MB。
- 自動再生の動画があるSNS:1日500MBから1GB超。プランを早々に使い切る原因はほぼこれです。
- ノートPCへのテザリング:1日1〜3GB。ビデオ会議をすればさらに増えます。
観光とナビ、普通のメッセージ中心の2週間なら5GBで余裕、10GBならかなり潤沢です。リモートワークなら20GB以上を見込んでください。オーストラリアで本当に効くのはデータを増やすことではなく、走る予定の地域のオフライン地図を都市を出る前にダウンロードしておくことです。町と町のあいだの圏外は異常ではなく仕様です。
搭乗前に設定を済ませる
eSIMはソフトウェアなので、インストールには通信が必要です。自宅のWi-Fiで済ませておけば、到着ロビーで慌てずに済みます。
- 出発の1〜2日前にプロファイルを購入・インストールし、オフのままにしておく。
- 端末のSIMロックが解除されているか確認する。eSIMではロック端末は救えません。
- SMS認証用に自国の回線は有効のまま残し、オーストラリアのeSIMはデータ専用にする。電話番号はそのまま、変わるのはデータ経路だけです。
- 旅行用プロファイルのデータローミングをオンにする。直感に反しますが、トラベルeSIMではこの設定が現地網への接続を可能にします。
- プランの有効化は着陸後に。飛行中に有効期間が始まるのを防げます。
周辺国と組み合わせる
17時間かけて1か国だけ、という人はまれです。2か国目を足すなら、国別プランのほうが地域パックより安いことがほとんどで、同じ端末に両方のプロファイルを入れられるので手間も変わりません。定番の延泊先には1.06ドルからのニュージーランドeSIM、島しょ部なら2.98ドルからのフィジーのプランがあります。ヨーロッパからの長距離便はアジア経由が多いので、乗り継ぎ用のシンガポールeSIMは空港のコーヒー1杯ほどの費用です。地域内を複数国またぐ旅程なら、決める前にオセアニアeSIM一覧で比較してください。
まとめ
オーストラリアでは、料金に30秒、カバーエリアに5分かけましょう。3Gという受け皿はもうないので、VoLTE対応を必ず確認。沿岸の都市を離れるなら最も広く届く通信網を選ぶ。データ量は地図ではなく動画を基準に見積もる。走る区間ごとにオフライン地図を落としておく。あとは自宅でプロファイルを入れ、着陸してからオンにするだけです。